その情報、どうやって確かめますか。
塾も教材も、書いてあることは似ています。外から見ると、どれも同じに見えます。私がどうやって確かめているかを、失敗も含めて書きます。
年中から小学校4年生くらいのお子さんがいるご家庭に向けて書いています。
- 塾も教材も、書いてあることは似ています。外から見ると、どれも同じに見えます
- 私自身、調べていて間違えかけたことが2回あります。この記事ではその実例から書きます
- 確かめる手順そのものは、すでに教材も本もあります。私が考えたものではありません
- ただし、全部やる必要はありません。時間をかけても惜しくないと思えるものだけで十分です
どれも同じに見える、という話
塾のサイトを3つ開いてみると、書いてあることはよく似ています。
「一人ひとりに合わせた指導」「実績があります」「まずは無料体験から」。教材のサイトも同じです。「楽しく続けられる」「効果が実感できます」。
どれが本当なのか、外からは分かりません。
私もこうしてブログを書いていますが、読む側から見れば、私の書いていることも他と区別がつかないはずです。だから「うちは違います」と言うだけでは意味がないと思っています。
そのかわりに書けるのは、私がどうやって確かめているかです。そして、同じことを読む側でもできます。
私が間違えかけた話、2つ
1本目の記事を書いたとき、文部科学省の「子供の学習費調査」を使いました。最初に見つけたのは、令和6年12月に公表された資料です。そこから数字を拾って、記事の下書きまで作りました。
ところが、調べを進めると令和8年1月に数値が訂正された差替版が出ていました。比べてみると、数字がかなり違いました。
| 当初版 | 訂正版 | |
|---|---|---|
| 公立小学校の学校外活動費 | 約21.6万円 | 約25.6万円 |
| 人口10万人未満と100万人以上の差 | 1.7倍 | 1.9倍 |
| 塾代が跳ねる学年 | 小5 | 小4 |
書きかけていた記事は、結論が変わるレベルで間違っていました。
そして今も、訂正前の数字を載せている記事はネット上に残っています。悪意があるわけではなく、公表当時に書いた記事が、そのままになっているだけです。
私は以前から、英語より先に日本語をしっかりやったほうがいいと思っていました。品詞(形容詞、副詞といった言葉の種類)が分かっていないのに、英語の文の仕組みが分かるはずがない、と。中学生を見ていて、そう感じてきました。
ところが、全国学力・学習状況調査の分析を読むと、こうなっていました。
| 中学生の英語力との関係 | 相関 |
|---|---|
| 数学 | .72 |
| 国語 | .62 |
英語は、国語より数学との関係のほうが強い。しかも英語の「書くこと」が、数学の各領域と最も強く結びついていました。私の考えとは逆です。
ただし、ここで大事なことがあります。この調査は、中学3年生に英語のテストを受けさせて、同じ日の国語と数学の点数と比べたものです。母語がどう育ったかを測ったものではありません。
だから「日本語は関係ない」という結論にはなりません。私の考えを否定できる性質のデータではない、というのが正確なところです。
それでも、自分の考えと合わないデータが出てきたことは事実です。確かめなければ、そのまま書いていました。
確かめる手順は、新しいものではありません
ここから具体的な話をします。先に断っておくと、これから書く手順は私が考えたものではありません。すでに、もっとちゃんとしたものがいくつもあります。
情報リテラシーの教材があります
スマートニュース メディア研究所が、学校現場向けに「いつ・ふく・えび・はつ・ばい」という覚え方を紹介しています。
| 確かめること | |
|---|---|
| いつ | いつ発信されたものか |
| ふく | 複数の情報源を確認したか |
| えび | エビデンス(証拠)はあるか |
| はつ | 発行元・筆者の専門性はどうか |
| ばい | バイアスや目的。セールス目的ではないか |
本も出ています
教育経済学者の中室牧子氏の『科学的根拠(エビデンス)で子育て』には、エビデンスを読み解くうえで注意すべきこととして、次の4点が挙げられています。
- エビデンスには信頼性の「階層」がある
- エビデンスは合理的な判断を助ける「補助線」にすぎない
- エビデンスは「絶対に覆らない決定版」ではない
- 海外のエビデンスは日本にあてはまるとは限らない
2つ目の「補助線にすぎない」は、私がこのページでやろうとしていることと、ほとんど同じです。
手順そのものは、マーケティングの定石です
定性調査(インタビューや観察で、人の話を聞く)と、定量調査(統計で数字を見る)を組み合わせる方法があり、仮説を立てるところから始めたい場合は「定性 → 定量」の順が適している、とされています。
上に挙げたものは、どれも「情報を受け取ったあと、それをどう確かめるか」の話です。私がやっているのは、その手前にもう一段ある形です。
棚卸し → データ → 差分
ここが最初です。そして、いちばん大事なところです。
自分が何を感じているか。周りの人が何と言っているか。主観でかまいません。直感でもかまいません。それを一度、言葉にしてみる。
データから始めてはいけません。先にデータを見ると、データに合わせて自分の考えを作ってしまいます。そうすると、差分が出ません。何も見えないまま終わります。
さきほどの「日本語が先」も、先に棚卸しをしていたから、合わないことが分かりました。データから入っていたら、「英語は数学との関係が強い」を読んで、そのまま受け入れて終わっていたはずです。
STEP 1〜5 データを見るときに、確かめる5つ
| 見るところ | 何を確かめるか |
|---|---|
| 誰が調べたか | 公的機関か、それを売っている会社か。塾のサイトが「塾に通う人の割合」を調べていたら、その数字は塾を探している人に聞いたものかもしれません |
| いつのデータか | 何年のものか。訂正されていないか。私が間違えかけたのがここです |
| 何を測ったか | 「支出した家庭の割合」と「通っている子の割合」は違います。測っていないことを結論にしていないか |
| 分母は何か | 何人に聞いたか。どういう人に聞いたか。3,000人でも、偏った3,000人なら意味が変わります |
| 断定しているか | 「分かっていない」と書いてある記事は、たいてい信用できます。全部言い切っている記事は、少し疑っていいと思います |
最後の項目について、ひとつ例があります。そろばんについて書かれたあるブログに、こう書かれていました。
自分の商売に不利なことを書いています。こういう記事のほうが、私は信用します。
STEP 6 差分を読む
データを見たら、最初の棚卸しと比べます。
- 合っていたところ … 自分の感覚は、そんなに外れていなかった
- 合わなかったところ … ここに情報があります
合わなかったところが本体です。仮説が正しいかを確かめるのではなく、ズレているところを探す。ズレている理由を考えると、自分が何を見落としていたかが分かります。
この4本で、実際に何を確かめたか
ここまでに4本書きました。それぞれで何を確かめたかを、正直に書いておきます。
| 記事 | 確かめたこと |
|---|---|
| 1本目 | 訂正版があることに気づいた。訂正前なら結論が変わっていた |
| 2本目 | 前倒し後の世代の結果が出ていたが、コロナと重なっていて切り分けられないと報告書に書かれていた。だから「前倒しのせいだ」とは書かなかった |
| 3本目 | 自分の経験と理論が重なったが、「私の直感が裏づけられた」とは書かないようにした。合うものだけ拾うのは、都合のいい使い方だからです |
| 4本目 | 倒産件数などは公的統計ではなく民間の調査だったので、その旨を明記した |
どれも、書かなかったことのほうに手間がかかっています。
全部やる必要は、ありません
ここまで書いておいて何ですが、毎回これをやっていたら疲れてしまいます。
習い事を1つ決めるたびに、公的統計を探して、出典を確かめて、自分の棚卸しと比べる。そんなことはできませんし、する必要もないと思っています。
大事なのは、やるかどうかを選ぶことです。
- 週1回の習い事を1つ増やすだけなら、そこまでしなくていい。合わなければやめればいい話です。
- 6年間をかけるもの、家計に大きく響くもの、他を手放すことになるもの。そういうときは、時間をかけても惜しくないはずです。
そこまで時間をかけても惜しくないと思えるなら、しっかりやったほうがいい。そのほうが納得できますし、結果がどうあれ後悔は少なくなります。
逆に、そこまでの重さがないものなら、近くにあるもので始めてみればいいと思います。
「断定している記事」の、いちばん有名な例
脳科学をよそおっていますが、科学的な根拠が乏しい俗説のことです。OECDが2007年に報告書で取り上げ、日本神経科学学会も声明を出しています。
- 人間は脳の10%しか使っていない
- 男脳・女脳
- 3歳までに脳が決まる
- その子に合った学習スタイルがある
最後のものは、教える側の9割以上が信じているという調査があります。それでも、根拠は確かめられていません。
次の記事で、この話を書きます。
そのまま信じてほしいとは思っていません
私は、ここで材料を出しています。調べたことを書いて、分かっていないことは分かっていないと書いて、そのうえで自分の考えを書いています。
ただ、それをそのまま信じてほしいとは思っていません。
ここに出典を書いているのは、確かめられるようにするためです。リンクをたどれば、元の資料にたどり着きます。私の読み方が正しいかどうかも、そこで確かめられます。
どれも同じに見える情報の中から、何かを選ぶことになります。そのときに、少しでも材料になればと思って書いています。
小学5年生から先のこと
小学5年生から高校3年生までは、ラーニングPM で見ています。ここで書いているのは、その手前の時間の話です。中学3年生まで見てきたからこそ、もっと前に何があったのかが気になっています。
- 情報リテラシーのチェックリストは、スマートニュース メディア研究所が学校現場向けに公開しているものによります
- 中室牧子『科学的根拠(エビデンス)で子育て』(ダイヤモンド社)
- 定性調査と定量調査の組み合わせについては、マーケティングリサーチの分野で一般的に解説されている手順によります
- 文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」(令和8年1月16日差替版)
- 文部科学省「令和5年度全国学力・学習状況調査の英語の結果を活用した専門的な分析」(横浜国立大学/令和6年3月29日)
- 引用したそろばんに関する記述は、オンライン家庭教師サービスのブログ記事によるものです
- 1本目〜4本目の記事で使用したデータの出典は、それぞれの記事に記載しています
