塾は増えているように見えます。でも、通っている子は減っています。

LEARNING PM PRELUDE ── 04

塾は増えているように見えます。
でも、通っている子は減っています。

看板はよく目につくし、新しい教室ができたという話も聞きます。実際のところ何が起きているのか、経済産業省の統計を読みました。

年中から小学校4年生くらいのお子さんがいるご家庭に向けて書いています。

先に結論です
  • 学習塾の売上は増えていますが、通っている生徒の数は減っています。経済産業省の統計です
  • つまり、一人あたりにかける額が上がっているということです。需要が増えて市場が伸びているわけではありません
  • そして、低学年が通っているのは、いわゆる「塾」ではありません。プリント教材の教室が中心です
  • 塾の側も二極化していて、2024年には倒産53件、休廃業・解散195件でした

まず、数字から

街を歩くと、塾の看板はよく目につきます。新しい教室ができたという話も聞きます。子どもの数は減っているのに、塾は増えているように見える。

実際はどうなっているのか、経済産業省の統計を見てみます。

生徒は減っていて、売上は増えています

経済産業省は、学習塾の受講生徒数をもとにした「学習塾指数」という数字を出しています。その推移を見ると、こうなっていました。

図1 学習塾の「生徒数」と「売上」の動き
受講生徒数(学習塾指数)
↓ 低下傾向
6〜18歳の人口が減り続けている
売上高指数
→ 堅調
一人あたりの売上は2016年以降、増加を続けている
通う子が減った分を、一人あたりの単価で埋めている

経済産業省はこの状況を、受講生の減少傾向を受講料の値上げにより売上高を確保している姿だと読んでいます。

「塾が増えているのは、それだけ需要があるからだ」と考えたくなりますが、統計が示しているのはそうではありません。

出典 経済産業省「止まらない少子化、学習塾への影響は?」(その他の研究・分析レポート)
学習塾指数は第3次産業活動指数、売上高は特定サービス産業動態統計調査に基づくものです
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20240321hitokoto.html
ここが本題です

低学年が通っているのは、「塾」ではありません

「塾に行かせたほうがいいのか」と考えるとき、頭に浮かぶのは教室に生徒が並んで、先生が前で教える光景かもしれません。実際に低学年の子が通っているのは、それとは違います。

ベネッセ教育総合研究所の調査によると、こうなっています。

図2 学年によって、通っているところが変わります
小1〜小3
プリント教材の教室
その他
小4〜小6
プリント教材
補習塾
進学塾
中学生
補習塾
進学塾
プリント教材の教室(公文のような形式) 補習塾 進学塾

小4〜小6では3種類が三分され、中学生になるとプリント教材の教室が減って二分されます。図は割合を正確に表したものではなく、構成の変化を示したものです。

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低学年で通っている場所と、中学生で通っている場所は、別のものです。同じ「塾」という言葉で呼んでいますが、中身が違います。

受講している教科は算数が最も多く、次いで国語。小1〜3生では英語が2〜3割です。

出典 ベネッセ教育総合研究所「データで考える子どもの世界 第7回 習い事・学習塾について考える その2 学習塾の実態」
https://benesse.jp/berd/special/datachild/comment07_2.html
塾の側の話

塾の側も、二極化しています

学習塾の業界では、生徒を集められる塾と、そうでない塾に分かれてきています。

  • 2024年、学習塾の倒産は53件、休廃業・解散は195件
  • 主要396社の赤字企業の割合は、26.0%から31.8%へ上昇
  • 上場企業でも再編が進み、東京個別指導学院はベネッセの完全子会社化により2026年1月に、ウィザスは投資ファンドの買収により2025年9月に、それぞれ上場廃止

通わせ始めた教室が、数年後になくなっている可能性は、以前より高くなっています。特に小規模な教室では、その傾向が強いとされています。

これは、良い悪いの話ではありません。続けられるかどうかは、子どもの側だけの問題ではないということです。

出典について 倒産・休廃業件数および上場企業の再編は、業界動向を扱う民間の調査データによります。公的統計ではない点にご注意ください。
費用の動き

費用が動くのは、小学4年生からです

1本目の記事で書いた数字を、もう一度だけ出します。公立小学校に通うお子さん1人あたりの、1年間の塾代です。

学年1年間の塾代
1年生約3.2万円
2年生約3.5万円
3年生約4.6万円
4年生約8.1万円
5年生約10.7万円
6年生約14.5万円

1年生から3年生まではほとんど動かず、4年生で3年生の1.75倍になります。さきほどのベネッセの調査と合わせると、こう読めます。

  • 小1〜3 … プリント教材の教室が中心。金額も動かない
  • 小4〜 … 補習塾・進学塾が増えてくる。金額が動き出す

低学年の時期は、まだほとんどのご家庭が動いていない、というのが全国の平均です。

住んでいる場所によっても、かけている額は違います 市町村の人口によって1.9倍の差があること、近くに教室が少ない場合に何が考えられるかは、こちらに書きました。 住んでいる場所で、習い事にかけている額が1.9倍違いました
出典 文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」表6(学年別補助学習費)/公立小学校・学習塾費(令和8年1月16日差替版)
お金以外のこと

お金以外の負担もあります

ここからはデータではなく、私が保護者の方から聞いてきた話です。

塾や習い事の負担は、月謝だけではありません。

  • 送迎。終わるまでの待ち時間を含めると、親御さんの時間がまとまって取られます
  • 曜日が固定される。その日の予定が組めなくなります
  • 体調が悪い日や天気の悪い日でも、優先せざるを得ない
  • 兄弟がいると、それぞれ別の場所に送ることになる

月謝の金額は最初に分かりますが、この部分は始めてみないと実感できません。

とくに送迎については、近くに教室が少ない地域でよく聞きます。片道20分かかれば、往復と待ち時間で2時間近くが埋まります。それが週に何回かあると、生活の組み立てそのものが変わります。

で、どうしますか

では、今は何を見ておきますか

この記事で分かったこと
  • 塾の市場は、需要が増えて伸びているわけではない。生徒は減り、一人あたりの単価が上がっています。
  • 低学年が通っているのは、中学生が通う「塾」とは違うもの。プリント教材の教室が中心です。
  • 費用が動き出すのは小4から。小1〜3はほとんど動きません。
  • 月謝以外の負担がある。送迎、曜日の固定、待ち時間。始めてみないと実感できない部分です。

年中から小学校3年生くらいまでは、全国の平均で見れば、まだほとんどの家庭が動いていない時期です。

だからといって「何もしなくていい」という話ではありません。2本目の記事で書いたとおり、英語力の調査で効いていたのは、開始時期ではなく「授業がよく分かること」と「勉強が好きであること」でした。その効果は、家庭の経済状況の影響を上回っていました。

そして3本目の記事では、なぜその2つが効くのかを書きました。人が自分から続けるようになるには、自分の意思で決めたい(自律性)、できると感じたい(有能感)という条件が必要だとする研究があります。「分かる」も「好き」も、そこにつながっています。

だとすれば、塾に行くかどうかを決める前に、見ておけることがあります。

  • 今やっていることを、その子は「できる」と思えているか
  • 「またやりたい」と言うか、何も言わないか

場所を変えても、ここが動いていなければ同じことが起きます。逆に、ここが動いているなら、場所はどこでもいいのかもしれません。

なぜ「分かること」と「好きなこと」が効くのか 2本目で出てきた結論と、1本目の「誰が決めたのか」が、同じところを指していました。それを説明している研究について書いています。 やらされていた勉強が、役に立ったと気づいたのは30代後半でした

小学5年生から先のこと

小学5年生から高校3年生までは、ラーニングPM で見ています。ここで書いているのは、その手前の時間の話です。中学3年生まで見てきたからこそ、もっと前に何があったのかが気になっています。

この記事で使ったデータについて
  • 経済産業省「止まらない少子化、学習塾への影響は?」(その他の研究・分析レポート)。学習塾指数は第3次産業活動指数、売上高は特定サービス産業動態統計調査に基づくものです
  • ベネッセ教育総合研究所「データで考える子どもの世界」第7回
  • 文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」(令和8年1月16日差替版)
  • 倒産・休廃業件数および上場企業の再編は、業界動向を扱う民間の調査データによります。公的統計ではない点にご注意ください
  • 「お金以外の負担」として書いた部分は、私が保護者の方から聞いてきた話であり、調査データではありません。地域や送迎の距離によって事情は大きく変わります
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