紙とタブレット、どう使い分けるか。
ノートにまとめるのと問題を解くのは、紙にしています。
タブレットで勉強する通信教育が広がっても、紙は家の勉強に残ります。私自身も、タブレットと紙を併用して勉強しています。
先に結論を書くと、使い分けです。アイデア出しや書き出し、PDFやKindleを読んだり書き込んだりすること、オンライン授業はタブレット。ノートにまとめる、試験勉強をする、問題を解くのは紙にしています。
もう一つ、生徒を見ていて考えるようになったことがあります。何を紙にして何をタブレットにするか以上に大事なのは、何をタブレットに任せて、何を自分で考えるかです。
中学生のお子さんがいるご家庭に向けて書いています。
- アイデア出し・書き出し
- PDF・Kindle を読む、書き込む
- オンライン授業
- 保管するかさばらず、年月がたっても傷まない
- ノートにまとめる
- 試験勉強
- 問題を解く
- パッとめくって調べる
読む・書き出すはタブレット、まとめる・解くは紙
タブレットにしていること
アイデア出し、オンライン授業、ノートアプリ、Kindle、PDFを読んだり書き込んだりするのは、ほぼタブレットです。オンライン授業では、ページの端がなく、どこまでも広げて書けるノートのアプリを使っています。iPad のように、使っていてストレスのないものを選べば、タブレットはかなり便利です。
保管も、タブレットに勝るものはありません。デジタルのデータなので、年月がたっても傷まず、かさばりません。
まっさらなページに思いつくまま書き出すときは、タブレットでも紙でもかまいません。
紙にしていること
ノートにまとめるとき、試験勉強をするとき、試験の問題を解くときは紙です。タブレットだと、なんとなく違和感があります。うまく言えないのですが、紙には勝てません。実際の記述の試験の大半が紙だから、なのかもしれません。
パッとページをめくって調べたいときも、紙のほうが圧倒的に早いです。
何度も書き直すものや、すぐに書き込んで、すぐにくしゃくしゃっと捨てられるものも紙です。紙がゼロにならないのは、仕事でも同じです。タブレットがどんなに便利になっても、ここは紙に勝てないと思っています。
タブレットだと、頭に入っていない気がする
タブレットで読んだものは、頭に入っていない気がします。思い込みかもしれません。
参考書なら、「あのページのあのあたりに、こういう図があった」「あのページのあそこにアンダーラインを引いて、要点を書いた」という記憶が残ります。本の厚みで「このへん」とつかんでいる感覚があり、付箋で覚えているところもあるかもしれません。タブレットでは、索引をどんなに使っても、この位置の記憶が残りません。
スクリーンショットで切り取ってノートのアプリに貼り、どんなに書き込みをしても同じです。便利すぎるからなのか、どこに何を書いたかが残りにくい気がします。
「あのページのあのあたりの図」「あそこに引いた線」が残る。本の厚みで「このへん」とつかめる
索引を使っても、スクリーンショットを貼って書き込んでも、どこに何を書いたかが残りにくい
ノートアプリできれいに整えて、それで満足してしまうことは、私にもあります。
| 場面 | 使うもの | 理由 |
|---|---|---|
| アイデア出し・書き出し | タブレット 紙でもよい | まっさらなところに書き出すだけなら、どちらでも変わらない |
| PDF・Kindle を読む、書き込む | タブレット | かさばらず、年月がたっても傷まない |
| オンライン授業 | タブレット | どこまでも広げて書けるノートのアプリが使える |
| ノートにまとめる・試験勉強 | 紙 | 「あのページのあのあたり」が残る |
| 問題を解く | 紙 | 本番の記述の試験の大半が紙 |
| パッと調べる・何度も書き直す | 紙 | めくるのが早い。すぐ書いて、すぐ捨てられる |
タブレットでも紙でも、「で、何を学んだ?」に答えられない
ここからは、私が教えた中学生3人の話です。
結局これ、何が大事なの?答えられなかった
このノートは一体何?答えられなかった
ここで何を学んだ?答えられなかった
1人目:まとめに力を入れて、ノートが整うと満足していた
1人目は、まじめな子でした。学校の授業でもノートをきれいにとり、板書もしっかり写していました。まとめることに力を入れて、ノートがきれいになると、うっとりしていました。そもそも、まとめて満足するタイプでした。
この子は、紙のノートでも同じでした。まとめて終わりなので、「結局これ、何が大事なの?」と聞くと、何も答えられませんでした。
2人目:計算用紙のように、書きっぱなしにしていた
2人目は、どこまでも広げて書けるノートのアプリを、紙で言う計算用紙のように使っていました。メモを書き、ひたすら計算をし、時間を計って、何もない1枚から書き出す。ノートをきれいに作ることにこだわるより、かさばらない計算用紙の代わりにして、ばーっと書いたら書きっぱなしでした。
目印もつけず、ノートを見返す習慣もありません。どこに何を書いたかも覚えていません。「このノートは一体何?」と聞いても、答えられませんでした。
3人目:録音、要約、リンクを貼って、ノートは一丁前だった
オンラインの家庭教師を始めるときに、親のタブレットを借りたり、買ってもらったりする子は多いです。みんなネットで調べて、ノートアプリを入れます。科目別や用途別にフォルダを作って、最初は頑張ります。
3人目は、アプリの機能を覚えて、使ってみるところから広げていきました。授業の録音の文字起こし、AIに要約してもらったもの、図、ネットで調べたもの、YouTube のリンク。いろいろなものを貼って、ノートはごちゃごちゃになっていました。
ノートは一丁前でした。それでも、「で、結論として、ここで何を学んだ?」と聞くと、何も答えられませんでした。頭には入っていませんでした。
録音と要約に任せると、聞く・見る・書くが抜ける
3人目のように、録音の文字起こしやAIの要約に頼る子は、聞く・見る・書くを放棄しているのかな、と受け止めています。私の話を録音していても、その場ではあまり聞いていません。あとで聞けばいい、と思っています。
録音をまとめてくれることを過信しているので、どうまとめればいいか、私が何を話していて、それがどうつながるかが分かっていません。きれいにまとまったものを、ショーケースのように保管しているだけです。
授業でも、社会や理科で、AIに要約してもらってきた生徒は、用語や大まかな流れは言えても、聞き方を変えると説明できなくなります。このことは「お子さんが勉強でAIを使うとき」にも書きました。
研究と突き合わせると、私の実感と合うところ、ずれるところ、まだ確かめられていないところがありました。紙と画面の研究は、大学生や大人を対象にしたものが多くあります。誰を対象にした研究かを、そのつど書きます。
家で端末を使う中学生は、4年で増えた
学校の端末を「ほぼ毎日」家に持ち帰る中学生は、2021年の15.8%から、2025年には39.8%になりました。学校の宿題にデジタル機器を使う中学生も、4割強から6割強に増えています。デジタルで学ぶと「深く考えて問題を解くことが減った」と感じている中高生は、5割を超えていました(東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所, 2026)。
読んで分かる量は、紙がやや上
小学生から大学生までの54の研究(約17万人)をまとめた分析では、同じ文章を読んだとき、紙のほうが内容の理解がやや上でした。差の大きさの目安(効果量)は0.21で、0.2が「小さい差」の目安です。差は説明文で出て、物語文では出ていません。時間を区切って読むときにも、差が大きくなりました(Delgado ほか, 2018)。
中学生に近い年齢では、ノルウェーの10年生(日本の中3〜高1にあたる)72人が、長めの文章を紙とPDFの画面で読んだ研究があります。紙で読んだ生徒のほうが、理解のテストの点が高くなりました(Mangen ほか, 2013)。
小学5年生38人が、紙と画面の両方で短い文章を読んだ研究では、紙のほうが理解が高く、子どもの「わかった」という感覚は紙と画面で変わりませんでした。画面での不利に、本人は気づいていませんでした(Halamish & Elbaz, 2020)。
ページのどこにあったかの記憶は、控えめ
大学生の研究では、12ページの冊子を読んだあと、答えがページを4つに分けたどこにあったかを聞くと、正しく答えられたのは約30%でした。でたらめに選んでも4回に1回は当たるので、位置の記憶はあっても控えめです(Lovelace & Southall, 1983)。
大人50人が、約28ページの短編ミステリーを紙の文庫本か Kindle で読んだ研究では、出来事が「いつ起きたか」を問う問題で、紙の正答が57.1%、Kindle が44.0%でした。出来事を順番に並べ直す課題も、紙のほうが正確でした。著者たちは、紙の本は左右のページの厚みや重さで、読んだ分と残りを手で感じられることが助けになったのではないかと考えています。手の感覚そのものは測っていません(Mangen ほか, 2019)。
小5から中2の371人を調べた研究では、紙で読んだ子のほうが線引きや書き込みが多く、紙で前に戻って見返すことは理解を支えていました(Goodwin ほか, 2020)。
撮る・写すと、その場で聞かなくなる
大学生の研究では、美術館で作品を丸ごと写真に撮ると、見ただけの作品より、覚えている数や細部が少なくなりました(Henkel, 2014)。撮った写真がすぐ消える条件でも同じように覚えにくくなり、著者たちは、撮る行為で注意がそれるからだと考えています(Soares & Storm, 2018)。
2つの実験で、大人計200人が録画の講義を見た研究では、手書きでノートを取った人がいちばんよく思い出せました。スライドをスマホで撮った人は、何もしなかった人と同じくらいでした。手書きの人は上の空になることが少なく、それが差につながっていました。本人たちは、3つのやり方の効果を同じくらいと見積もっていました(Wong & Lim, 2023)。
- いちばん手書きでノートを取った
- 同じくらいスライドをスマホで撮った・何もしなかった
本人たちは、3つのやり方の効果を同じくらいと見積もっていました。
整える・線を引くは、効果が低い
10の勉強法を、小学生から大人までの研究で評価したまとめでは、効果が高いのは「自分でテストする」「間をあけて繰り返す」でした。「要約する」「線を引く」「読み返す」は、効果が低いと判定されています(Dunlosky ほか, 2013)。
- 自分でテストする
- 間をあけて繰り返す
- 要約する
- 線を引く
- 読み返す
自分で線を引くことの研究をまとめた分析では、大学生には効いていましたが、小中高生でははっきりした効果が見られませんでした。先生が先に線を引いて渡したものは、効いていました(Ponce ほか, 2022)。小5から中2の研究でも、紙での線引きは大事でないところに引かれていて、理解とは逆の関係でした(Goodwin ほか, 2020)。
本番の試験は、いまは紙が多い
大学入学共通テストは、令和9年度(2027年1月)も、紙の問題冊子とマークシートで行われます(文部科学省, 2025)。英国の試験を所管する機関の文献のまとめでは、数学で途中の式や書き込みが要る問題は、紙のほうが有利とされています(Sweiry, 2025)。
研究とずれるところ
- タブレットと電子書籍の端末にしぼった分析(49研究)では、紙の優位は全体として小さく、別々の人を比べた研究では、大学生で紙が上(効果量0.23)、小中高生では差がありませんでした(0.06)。ただ、同じ人が両方で読む研究では、学年による違いは見られませんでした。アメリカの全国調査から選んだ大人数の研究2本では、小4と中2で紙のほうが上でした。著者たちは、小中高生に影響がないとは言い切れないと書いています(Salmerón ほか, 2024)。
- 大人45人の研究では、画面でも、ページの見た目が紙と同じなら、理解は紙と変わりませんでした。見た目を崩した画面だけが劣っていました(Hou ほか, 2017)。
- 子どもの研究では、文章から情報を探すのが速い子と遅い子の差は、単語の位置の記憶より、内容が出てくる順番の記憶にありました(Cataldo & Oakhill, 2000)。大人の研究でも、場面が文章の「どのあたりにあったか」を問う課題では、紙と Kindle に全体の差はありませんでした(Mangen ほか, 2019)。
- 日本の大学生の研究では、英文を読みながら単語を引くとき、電子辞書のほうが多くの語を引けて、短い時間で終わりました(Koyama & Takeuchi, 2008)。探す言葉が決まっているなら、電子のほうが速く探せます。
- オンライン講義を受けた大学生の研究では、スライドを撮った人のほうが、撮ったスライドの内容をよく覚えていました(Ditta ほか, 2022)。
- 全国学力・学習状況調査は、令和9年度から、すべての教科をコンピュータで行う予定です(文部科学省, 2026)。中学3年生にとって、試験はいつも紙、とは言えなくなっています。
確かめられていないこと
紙は、文字起こしも要約もしてくれない
研究では、小中高生がタブレットで読んでも、紙と差が出ていない分析がありました。扱っている内容と深さが関係しているのではないかと思っています。関係ないのなら、タブレットでもいいのかもしれません。この分析の著者たちも、大学生の研究ほど長く難しい説明文を使っていて、学年の差と文章の違いが重なっている可能性を挙げています(確かめてはいません)。
全国学力・学習状況調査がコンピュータになるなら、そこで答えが出てくるかもしれません。線を引くことは、私も、引いたところで整理できておらず、あまり意味がないと感じています。
そのうえで、何を紙にして何をタブレットにするか以上に、何をタブレットに任せて、何を自分で考えるかだと思っています。
大学生なら、膨大な講義を聞きながら、念のために録音しているはずです。膨大な量の中で要約はしてもらっても、要約にたどりつくまでの過程や背景は、別に自分で読んでいるはずです。
要約や要旨は、あくまで「その話を一言でまとめると何か」です。まとめるには、背景や過程を知っていることが前提になります。順序と考え方の問題です。
- 保管する
- 念のために録音する
- 膨大な量を要約してもらう
- 要約にたどりつくまでの過程と背景
- その話を一言でまとめると何か
紙は、文字起こしも要約もしてくれません。だから、タブレットの使いどころを間違えている子は、紙から入るべきだと考えています。
お子さんの様子と、ここに書いたことが違うと感じたら、知らせてもらえるとありがたいです。
何もないところから、まとめられるか
親が見るなら、まず、ノートも画面も見ずに、何もないところからお子さんがまとめられるかどうかです。
次に、紙とタブレットの両方でやらせてみます。まとめの出来が変わらないなら、タブレットも選択肢に入れていい、と考えています。
- まず何もないところから、まとめられるか
- 次に紙とタブレットの両方でやって、出来が変わるか
- 変わらなければタブレットも選択肢に入れる
まとめられるかを確かめるときに使える道具を、2つ置いています。1つ目は、習ったことばを1つ入れると、「何のため?」「なかったらどうなる?」「どうしてそう言える?」と問いが1つずつ出て、自分の言葉で答えていくと、最後に自分の説明ができあがる道具です。答えは出てきません。2つ目は、習ったことを問いにして書くと、次の日と1週間後の日付が入ったカードになる道具です。1週間後に、何も見ずに答えられるかを確かめられます。
何をタブレットに任せて、何を自分で考えるか
- アイデア出し・書き出し、PDFやKindle、オンライン授業はタブレット。ノートにまとめる、試験勉強、問題を解くのは紙にしています
- ノートが整っていても、録音や要約が貼ってあっても、「何を学んだ?」に答えられない子がいました。1人目は、紙のノートでも同じでした
- 親が見るなら、何もないところからまとめられるか。紙とタブレットの両方で出来が変わらなければ、タブレットも選択肢に入れる
習ったことを、聞き方を変えて確かめています
どこができていないかは、お子さんごとに違います。まずは無料相談で、いまどこでつまずいているかを、一緒に確認しませんか。指導をお受けするかどうかは、そのあとで決めていただいて構いません。
- Cataldo, M. G., & Oakhill, J. (2000). Why are poor comprehenders inefficient searchers? An investigation into the effects of text representation and spatial memory on the ability to locate information in text. Journal of Educational Psychology, 92(4), 791–799.
- Delgado, P., Vargas, C., Ackerman, R., & Salmerón, L. (2018). Don’t throw away your printed books: A meta-analysis on the effects of reading media on reading comprehension. Educational Research Review, 25, 23–38. https://doi.org/10.1016/j.edurev.2018.09.003
- Ditta, A. S., Soares, J. S., & Storm, B. C. (2022). What happens to memory for lecture content when students take photos of the lecture slides? Journal of Applied Research in Memory and Cognition.
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
- Goodwin, A. P., Cho, S.-J., Reynolds, D., Brady, K., & Salas, J. (2020). Digital versus paper reading processes and links to comprehension for middle school students. American Educational Research Journal, 57(4), 1837–1867. https://doi.org/10.3102/0002831219890300
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- Mangen, A., Olivier, G., & Velay, J.-L. (2019). Comparing comprehension of a long text read in print book and on Kindle: Where in the text and when in the story? Frontiers in Psychology, 10, 38. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.00038
- Ponce, H. R., Mayer, R. E., & Méndez, E. E. (2022). Effects of learner-generated highlighting and instructor-provided highlighting on learning from text: A meta-analysis. Educational Psychology Review, 34, 989–1024. https://doi.org/10.1007/s10648-021-09654-1
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- Wong, S. S. H., & Lim, S. W. H. (2023). Take notes, not photos: Mind-wandering mediates the impact of note-taking strategies on video-recorded lecture learning performance. Journal of Experimental Psychology: Applied, 29(1), 124–135. https://doi.org/10.1037/xap0000375
- 文部科学省高等教育局(2025). 令和9年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施大綱.
- 文部科学省(2026). 令和9年度全国学力・学習状況調査のCBT方式での実施に係るサンプル問題の公開及び説明会について(事務連絡, 2026年10月9日). https://www.mext.go.jp/content/20261009-mxt_chousa02-000045240-01.pdf
- 東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所(2026). 子どもの生活と学びに関する親子調査2025 ダイジェスト版. https://benesse.jp/berd/shotouchutou/research/pdf/oyako_tyosa_2025_0326.pdf
- この記事の生徒の場面は、個人が特定されないように書いています。
