やらされていた勉強が、役に立ったと気づいたのは30代後半でした。

LEARNING PM PRELUDE ── 03

やらされていた勉強が、
役に立ったと気づいたのは30代後半でした。

これまでに2本書きました。別々に調べたことですが、並べてみると同じところを指していました。それを説明している研究があります。

年中から小学校4年生くらいのお子さんがいるご家庭に向けて書いています。

先に結論です
  • 1本目は「誰が決めたのか」、2本目は「効いていたのは開始時期ではなく、授業が分かることと好きなこと」でした
  • この2つは、同じことを別の角度から言っています。人が自分から続けるようになる条件を扱った研究と、きれいに重なります
  • ただし「子どもに決めさせればいい」という話にはなりません。親が決める時期は必要です
  • そして、それが効いてくるのがいつかは、そのときには分かりません。私の場合は30代後半でした

これまでに書いた2本を、並べてみます

1本目で書いたのは、住んでいる市町村の人口によって、習い事や塾にかけている額が1.9倍違うということでした。ただ、その差の理由はデータに書かれていません。

2本目で書いたのは、英語が2020年度から小学3年生で始まったこと。その最初の世代が中学3年生になったときの全国調査で、3人に1人が「聞いて少し分かる」以下だったこと。ただし、その原因が前倒しにあるのかは分かりません。調査から見えたのは、別のことでした。

この2本は、別々に書いたものです。でも、並べると同じところを指していました。

つながる場所

この2つを、まとめて説明している研究があります

自己決定理論(Self-Determination Theory)といいます。アメリカの心理学者、デシとライアンが提唱したもので、人がどうすれば自分から続けるようになるかを扱っています。

この理論では、人が自分から取り組むようになるには、3つの欲求が満たされる必要があるとされています。

自律性
目標や目的のために、自分の意思で決めたい
有能感
自分の力を発揮したい。できると感じたい
関係性
人や集団と良い関係を築きたい

並べてみると、書いてきたことと重なります。

これまで書いたこと理論での呼び名
選んだのか、近くにあったから始めたのか自律性
授業がよく分かること有能感
英語が好きであること内発的動機づけ
3つが満たされた結果として生じるもの

2本目で「授業が分かることの効果が大きい」と書きましたが、なぜそれが効くのかは書いていませんでした。理論の側では、できると感じられることが、人が自分から続けるための条件のひとつだとされています。

有能感は、肯定的なフィードバックが得られることで満たされる、とされています。分かる、できた、と思える経験のことです。

ここは要注意

ただし、「子どもに決めさせればいい」ではありません

!

自律性が大事だと聞くと、「本人がやりたいと言うまで待つ」「子どもに選ばせる」という結論になりそうですが、研究の側ではそうなっていません。

学習意欲の研究では、内発的動機づけを最も望ましいとする見方に対して、批判的な検討も行われています。そこで指摘されているのが、他律から自律へのプロセスとして学習意欲の発達を捉える必要があるということです。

最初は外から与えられたものが、だんだん自分のものになっていく。その順番があります。

年中の子に「何をやりたい?」と聞いて、答えを待つ。それだけでは足りません。親が決める時期は必要です。

問題は、決めること自体ではありません。

私の場合

私の場合、気づいたのは30代後半でした

ここからは私の話です

私は小さいころ、公文に通い、小学3年生から進学塾に入り、中学受験をしました。自分で決めたわけではありません。親が敷いた道です。当時、なぜこれをやるのかを考えたことは一度もありませんでした。やらされている感覚は、確かにありました。

そして正直に書くと、私は勉強が得意な子どもではありませんでした。中学受験は第一志望に届かず、大学受験も失敗して専門学校に進んでいます。

では、あの時間は無駄だったのか。

気づいたのは、ずっと後です。この家庭教師の仕事を始めてからでした。

教える側にも知識が要るので、自分で勉強を始めました。ただ、教えるだけの家庭教師はいくらでもいます。その子に合った形で結果を出すには何が必要なのかを考えるようになって、そこで初めて気づいたことがあります。

  • 普通なら挫折するような勉強を、集中して続けられた
  • ベースになる知識があると、学び直すときの効率がまったく違う
  • 中学生を教えている今、その差がはっきり見える

そのときになって、あのころ積んだものが土台になっていたと分かりました。改めて親に感謝したのは、そのタイミングです。

もっと賢い子なら、受験のときに気づくのだと思います。私は30代後半でした。そして、一生気づかない人もいます。

気をつけたいこと

私が感謝しているからといって、誰でもそうなるとは思っていません

放課後を友達と遊ぶ時間に使わなかったせいで、あのころを取り戻せないと感じる人もいます。どちらになるかは、そのときには分かりません。

そして、いつ効いてくるのかも分かりません。受験のときかもしれないし、ずっと後かもしれないし、来ないかもしれない。

だから、子どもが今どう言っているかだけでは判断できないのです。

「楽しい」と言っているから続ける。「嫌だ」と言っているからやめる。それだけでは、後から効いてくるかどうかは測れません。

かといって「いつか感謝するから続けさせなさい」とも言えません。私はそうなりましたが、そうならない人もいるからです。

できること

では、何ができるか

私が中学生を見ていて思うのは、始める前に確かめられることが2つある、ということです。

1. 何と引き換えになるのかを、知っておく

何かを始めれば、その時間は他には使えません。週1回通えば、その曜日の放課後が埋まります。大事なのは、それを知ったうえで決めたかどうかです。

2本目の記事で、中学受験のために1年間学校を休んだご家庭の話を書きました。その1年、英語には一切触れていません。中学校に入ったとき、英語はゼロからのスタートになりました。

でも、ご家庭はそれを承知のうえで選んでいました。だから後から「こんなはずでは」とはなっていません。

手放すものを知って決めれば、結果がどうあれ、納得できる形で残ります。

2. 本人に一度は聞いておく

ここが、私が中学生を見ていて一番気になっているところです。

始めた理由を聞くと、本人が答えられないことがあります。親御さんに聞くと、「本人も納得していたはず」と言われる。でも、本人は覚えていない。

年中や小学校低学年の子が、自分で全部決められるとは思っていません。さきほど書いたとおり、親が決める時期は必要です。

ただ、決めたあとに一度だけ「これをやることにしたよ」と伝えて、本人の反応を見ておく。それだけでも違います。後から本人が振り返るときに、そこが起点になるからです。

親御さんは忙しいので、始めたあと一つひとつ確認する時間はなかなか取れないと思います。だからこそ、始めるときの一度だけです。

で、どうしますか

決めるのは、ご家庭でいいと思います

年中の子に丸投げする話ではありません。ただ、決めるときに2つだけ。

始めるときに、確かめておきたい2つ
  • 何と引き換えになるのかを、知っておく。その時間は他には使えません。知ったうえで決めたかどうかが、後から効いてきます。
  • 本人に一度は伝えて、反応を見ておく。決めるのは親で構いません。ただ、伝えた記憶があるかどうかで、後から振り返るときの起点が変わります。

そのうえで始めたなら、あとは待つしかありません。効いてくるのが受験のときか、大人になってからか、来ないのか。それは誰にも分かりません。

私の場合は、30代後半でした。

小学5年生から先のこと

小学5年生から高校3年生までは、ラーニングPM で見ています。ここで書いているのは、その手前の時間の話です。中学3年生まで見てきたからこそ、もっと前に何があったのかが気になっています。

この記事で参照したもの
  • 自己決定理論(Self-Determination Theory)は、E.L.デシとR.M.ライアンが提唱した動機づけの理論です。自律性・有能感・関係性の3つの基本的心理欲求が満たされることで、内発的動機づけが促進されるとされています
  • 「他律から自律へのプロセスとして学習意欲の発達を捉える必要性」については、内発的動機づけを最も望ましいとする見方への批判的検討として、学習意欲研究の中で論じられています
  • 1本目・2本目の記事で使用したデータの出典は、それぞれの記事に記載しています
  • 「私の場合」として書いた部分は、私個人の経験です。一般的な傾向を示すものではありません
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