小学校に入る前に読み聞かせを多く受けていた子は、
中学2年生まで、読書時間が1.5〜2倍のままでした。
読み聞かせや読書は、どこまで子どもの力になるのか。「力になる」とする研究と、それに疑問を投げかける研究を、並べてみました。
年中から小学校4年生くらいのお子さんがいるご家庭に向けて書いています。
- 小学校に入る前に週4日以上読み聞かせを受けていた子は、週1日未満だった子より、中学2年生まで1.5〜2倍の読書時間を保っていました(同じ子を追いかけた調査)
- ただし、読み聞かせの効果の大きさは研究によって割れていて、比べ方を厳密にするほど小さく出ます
- 「読む力のある子が、たくさん読む」という向きを示す大規模な研究もあります
- 私の考えは、入口の素材は問わない。読む力は、文字を正確に読む・語彙・文章の組み立てをつかむ、の積み重ねだと考えています
「本を読まない子」の割合は、数え方で大きく変わる
全国学校図書館協議会の2025年の調査では、5月の1か月に読んだ本は、小学生が平均12.1冊、中学生が3.9冊、高校生が1.4冊でした。1冊も読まなかった子は、小学生9.6%、中学生24.2%、高校生55.7%で、小学生が9%を超えたのは2003年以降で初めてです。
ところが、別の調査では「読まない子」がもっと多く出ます。何を数えているかが違うからです。
「月に1冊」と「毎日の時間」では、同じ「読まない」でも意味が違います。数字を見るときは、何を数えたかを先に確かめてください。
低学年のデータがあるのは、東京都の調査です。1か月に本を読まなかった子は、小1で7.6%、小3で7.4%。どの学年も上がる傾向にあります。
入学前の読み聞かせと、その後の読書時間
東大とベネッセの研究グループは、同じ子どもを小学1年生から中学2年生まで追いかけています。小学校に入る前に読み聞かせをどれくらい受けていたかでグループを分けると、差は中学生になっても続いていました。
小1〜3の読書時間は保護者の回答、小4からは子ども本人の回答です。
同じ調査では、家にある本の数によっても差が出ていました。2019年のデータで、本が100冊以上ある家庭の子の読書時間は1日平均25.5分、30冊未満の家庭の子は12.4分です。
全国学力調査の保護者調査にも、近い結果があります。家庭の経済的な条件が厳しいのに学力が上位4分の1に入った子の家庭では、「小さいころ絵本の読み聞かせをした」などに当てはまる割合が、そうでない家庭より5.8〜12.0ポイント高くなっていました(2017年度の調査)。2021年度のデータの分析でも、こうした子の保護者の特徴として、絵本の読み聞かせが挙がっています。
ベネッセ自身も、読書と成績や自信の関係はあくまで相関で、因果の検証はこれからだとしています。ここまでのデータが示しているのは「関連がある」ところまでです。
読み聞かせの効果の大きさは、研究によって割れている
では、読み聞かせをすると言葉の力は伸びるのか。実験を集めた分析はいくつかあり、結果はそろっていません。
1〜6歳の子を対象に、親に読み聞かせの方法を伝えた19本のランダム化比較試験をまとめた分析では、話す力に d = 0.41、聞いて理解する力に d = 0.26 の効果がありました。ただし、回数が少ない場合は効果がほとんど出ていません。
一方、2019年の別の分析では、全体の効果は g = 0.194 と、それまでの分析より小さく出ました。比べる相手の子にも別の活動をさせた、より厳密な研究に絞ると、効果はほぼゼロ(g = 0.028)です。しばらくたってからの追跡では、有意な差は出ていませんでした。さらに、出版されやすい研究の偏りを補正すると、効果は g = 0.046〜0.140 まで小さくなる可能性があるとしています。
子どもに問いかけながら読む「対話型」の読み聞かせは、普段の読み聞かせより語彙を伸ばす上乗せ効果がありました(d = 0.59)。ただ、その効果は4〜5歳になるとかなり小さくなっていました。
読むから伸びるのか、読めるから読むのか
99本の研究をまとめた分析では、読書量と読む力の間に、中程度から強い関連がありました。読書量で説明できる言葉の力の差は、幼児期の12%から、小学校13%、中学校19%、高校30%、大学34%と大きくなります。著者たちは、読める子ほどよく読み、よく読むからさらに伸びる、という上向きのらせんで説明しています。
日本でも、小学1〜6年生992人を調べた研究で、6種類の読書量の指標がどれも、語彙力や文章理解力と正の関連を持っていました。
一方で、向きが逆だとする研究もあります。7歳半の双子とそのきょうだい約1万1千人のデータを使った分析では、読む力が読書量を決める向きが支持されました。読む力は遺伝の影響が大きく、読書量は遺伝と環境が同じくらい影響していました。
家庭の環境についても、注意が必要です。親は本のある環境と一緒に、読む力の素質も子に渡します。そのため、家の本の数と子の読む力の関連には、遺伝による見かけの関連が混ざるという指摘があります。親自身の読む力を考慮すると、その関連が部分的に説明されたという研究もあります。ただし、中国語圏の2024年の研究では、同じ点を考慮しても家庭環境の効果が残っていました。
ここは研究者の間でも見解が分かれています。「読ませれば伸びる」とも「環境は関係ない」とも、言い切れないところです。
どの教科の教科書も、文字で書かれている
教科書などの短い文章を正確に読めるかを測る「リーディングスキルテスト」は、小学5年生から大人まで、累計50万人が受けています。結果からは、多くの人が「読める」と「読めない」の中間で、読めるつもりになっている実態が見えてきたといいます。
ただ、国語教育の研究者からは、このテストが測る読解力は論理的な操作を重視するタイプで、全国学力調査が測る「活用」の読解力とは性質が違う、という整理もあります。
語彙については、英語を外国語として学ぶ人の研究で、文章の単語の98%を知っていることが、十分に読むための目安として広く引用されてきました。一方、その後の再現研究では、知っている単語の割合だけでは読解をあまり予測できないとされています。語彙は必要だが、それだけでは足りないということです。
文法の知識と読解力の関係を86本の研究でまとめた分析では、両者の相関は大きいとされています。子ども向けの本は、子どもに向けた話し言葉より珍しい語の種類が多い、という分析もあります。
文章の組み立て(説明、順序、比較、原因と結果など)の読み取り方を教える指導については、小学4〜6年生を対象にした44本の分析があります。指導の直後には、問いに答える力で g = 0.25、要約する力で g = 0.57 などの効果がありました。ところが、時間をおいたテストでは、指導を受けた子と受けなかった子の差がなくなっていました。
同じ論文は、小学4年生ごろに「読むことを学ぶ」段階から「学ぶために読む」段階へ移るため、この時期に読解のつまずきが出やすいとも説明しています。
動画とゲームは、どう見られているか
6歳未満の子の画面の使い方を調べた100本の研究(約17万7千人)をまとめた2024年の分析があります。番組や動画を見る時間は、認知面(言葉や考える力など)と負の関連がありました(r = −0.16)。テレビが背景でついていることも負の関連です(r = −0.10)。一方、大人と一緒に使うことは正の関連でした(r = 0.14)。
子ども向けの内容そのもの(r = 0.01)や、ゲーム・アプリ(r = −0.01)には、はっきりした関連は見られませんでした。
ただし、100本のうち65本は研究の質が低いと評価されています。また、一時点で調べた研究ほど負の関連が強く出ていて、因果までは言えないとされています。短い動画を次々に見ることと読む力の関係を直接調べた研究は、今回は見つけられませんでした。
語彙がないと、場面を思い浮かべられない
英語の文法も長文読解も、結局は語彙がないと始まりません。知らない単語が続けば場面を思い浮かべられず、前後の文のつながりもつかめないからです。
要旨を示す言葉や、話が切り替わる接続詞をまったく意識していない生徒は、英語で苦労します。そして多くの場合、その手前の国語の段階でつまずいています。
どの教科の教科書も、文字で書かれています。書かれていることを読めなければ、内容を思い浮かべられません。語彙がなければ正確な意味をつかめず、段落や接続詞をとらえられなければ、どこが大事なのかが分かりません。
本を読んでいれば国語ができるようになるのか、というのは別の問題だと思っています。ただ、文字を正確に読めること、語彙があること、たくさんの話に触れてきて文字の並びをなめらかに読めること、接続詞や段落を意識して読めること。この積み重ねが、読解力になっていると感じます。
書店ゼロの自治体は3割近く。ただし、数字の読み方に注意
出版文化産業振興財団の調査では、2026年3月時点で、書店が1軒もない自治体は全国の市区町村の29.3%でした。
この割合には、読み方の注意があります。町や村の多い県ほど高く出やすく、都道府県ごとの町村の数との相関は r = 0.79 と高い、という指摘です。書店ゼロの割合を、そのまま「本が手に入りにくい地域の割合」と読み替えることはできません。
図書館は、2024年度に全国3,400館と過去最多になりました。国の有識者会議の報告書によると、設置率は市ではほぼ100%ですが、町や村では低く、身近に図書館のサービスを受けられない地域がまだ多いとされています。
本の手に入れ方も変わってきています。小学4年生から高校3年生では、電子書籍を読む子が2割、電子コミックを読む子が3割強いました(2023年)。
私が暮らしている地域では、学校や学童の近くにたいてい図書館があります。書店も、都内ほどではありませんが何軒もあります。ネットで買うことも、電子書籍で読むこともできます。「地方だから本に触れにくい」とは、一概には言えないと感じています。
データと、私の見聞きを照らし合わせる
一致すること
- 語彙がないと読めない、という点です。英語の研究でも、語彙は読むための前提として扱われています
- 文法と読解の関係、文章の組み立てを読み取る力と読解の関係にも、裏付けがあります
- 入学前に読み聞かせを受けていた子ほど、その後も長く本を読んでいる、という関連が出ています
- 一人で動画を見続けることについては、番組を見る時間が長いほど認知面が低い傾向、という方向は一致します
ずれること
- 読み聞かせの効果の大きさは、研究によって大きく違います。比べ方を厳密にした研究では、ほぼゼロでした
- 「たくさん読むから読めるようになる」より、「読める子がたくさん読む」向きを支持する大規模な研究があります
- 家庭の本の数と子の読む力の関連には、遺伝の影響が混ざっている可能性が指摘されています
- 文章の組み立ての指導は、直後には効いても、時間がたつと差が消えていました。一度教えれば身につく、とは言えません
- 動画でも、大人と一緒に見ることは正の関連でした。「動画は一律にダメ」とは言えません
確かめられないこと
- マンガ・学習漫画・図鑑、ゲームの会話文が読む力につながるかを、日本の子どもで直接調べた研究は見つけられませんでした。ゲーム・アプリと認知面の関連は「なし」でしたが、文字を読む効果を調べたものではありません
- 小学校に入ってから読み聞かせを続けた効果を、直接示すデータは見つけていません
- 短い動画を次々に見ることと、読む力の関係
- よく引用される「絵本には大人の会話の2倍の珍しい語が出てくる」という話は、元の論文の表と合わないという指摘があり、この記事では使っていません
- リーディングスキルテストと学力の関係を示す数字は、開発者のインタビューでの発言で、査読論文では確認できていません
それでも私は、入口の素材は問わないと考えています
読み聞かせと自分で読む読書、どちらがどう効くのかは、専門家の判断に任せたいと思います。そのうえで、私の考えを書きます。
読み聞かせの量や関わり方は、入口です。やらせればいい、というものではないと思っています。それでも、読み聞かせを続けられるなら、続けたほうがいいと考えています。
ただし、興味のない本まで無理に読ませる必要はないと思います。好きな話なら、子どもは自分から読みます。
マンガでも、図鑑でも、学習漫画でも、興味があるなら素材は問わず手に取れるようにしたほうがいいと考えています。内容が薄くても、文字に触れて、想像を働かせて、文の意味をつかむことに意味があるからです。極端に言えば、ゲームの登場人物の会話や物語を、文字で追いながら読むのでもいいと思っています。
分けて考えたいのは、文字のない動画をただ見続けることです。短い動画を次々とスワイプして見ているだけでは、目は使っていても、文字を読んで意味をつかむ力は育ちにくいと考えています。
何を入口にするかを決めるのは、それぞれのご家庭です。
1週間、子どもが手に取った「文字のあるもの」をメモしてみる
何かを始める前に、まず今の様子を見てみます。1週間、子どもが自分から手に取った「文字のあるもの」を、一言ずつメモしてください。
1週間たったら、次の3つを見返してみてください。
- どんなものに、自分から手が伸びていたか
- そのとき、大人は一緒にいたか
- 文字のないものだけで終わった日は、何日あったか
手が伸びたものが、その子の入口です。そこから少しずつ、文字の量を増やしていければ十分だと思っています。
- 入学前に読み聞かせを多く受けていた子は、中2まで読書時間が1.5〜2倍だった。ただし、これは関連で、因果までは分かっていません。
- 読み聞かせの効果の大きさは、研究によって割れる。比べ方を厳密にするほど小さく出ています。
- 「読める子がたくさん読む」向きを示す研究もある。読ませれば伸びる、とは言い切れません。
- 読む力は、文字を正確に読む・語彙・文章の組み立ての積み重ね。どの教科も文字で書かれています。
- 私の考えは、入口の素材は問わないこと。まずは1週間、子どもが自分から手に取った文字をメモするところからです。
小学5年生から先のこと
小学5年生から高校3年生までは、ラーニングPM で見ています。ここで書いているのは、その手前の時間の話です。中学3年生まで見てきたからこそ、もっと前に何があったのかが気になっています。
- 全国学校図書館協議会「第70回学校読書調査」(2025年)
- 東京都 子供の読書に関する調査(2024年度、2025年4月公表資料)
- 東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態 ―調査結果からわかること―」(2023年10月。「子どもの生活と学びに関する親子調査」2015〜2022年)
- 東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どものICT利用に関する調査2023」
- お茶の水女子大学による平成29年度全国学力・学習状況調査 保護者調査の分析(日本経済新聞の報道による)
- 文部科学省「令和4年度 学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」
- Dowdall, N., et al. (2020). Shared picture book reading interventions for child language development. Child Development, 91(2)
- Noble, C., et al. (2019). The impact of shared book reading on children’s language skills: A meta-analysis. Educational Research Review, 28
- Mol, S. E., Bus, A. G., de Jong, M. T., & Smeets, D. J. H. (2008). Added value of dialogic parent-child book readings. Early Education and Development, 19(1)
- Mol, S. E., & Bus, A. G. (2011). To read or not to read. Psychological Bulletin, 137(2)
- 猪原敬介・上田紋佳・塩谷京子・小山内秀和(2015)「複数の読書量推定指標と語彙力・文章理解力との関係」教育心理学研究
- van Bergen, E., et al. (2018). Why do children read more? Journal of Child Psychology and Psychiatry, 59(11)
- van Bergen, E., et al. (2017). Why are home literacy environment and children’s reading skills associated? Reading Research Quarterly
- Zhang, et al. (2024). Is there a genetic confound in the relation of home literacy environment with children’s reading skills? Reading Research Quarterly
- リーディングスキルテストについて:新井紀子氏へのインタビュー(東京書籍)、間瀬茂夫氏の整理(北海道教育大学の論文による)
- Hu, M., & Nation, P. (2000). Unknown vocabulary density and reading comprehension. Reading in a Foreign Language, 13(1)/Kremmel, B., et al. (2023). Language Learning, 73(4)
- 文法知識と読解力の関係に関するメタ分析(2023年)
- Features of lexical richness in children’s books: Comparisons with child-directed speech(Nuffield Foundation の助成研究)
- Bogaerds-Hazenberg, S. T. M., et al. (2021). A meta-analysis on the effects of text structure instruction on reading comprehension in the upper elementary grades. Reading Research Quarterly, 56(3)
- Mallawaarachchi, S., et al. (2024). Early childhood screen use contexts and cognitive and psychosocial outcomes. JAMA Pediatrics, 178(10)
- 出版文化産業振興財団 無書店自治体調査(2026年3月時点。読売新聞・朝日新聞の報道による)/飯田一史「『無書店自治体の割合』が一人歩きする問題点」(Yahoo!ニュース エキスパート、2026年6月)
- 文部科学省「令和6年度社会教育統計(社会教育調査の結果)中間報告」(2025年7月)/図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議「図書館が拓く未来の学びと地域社会」(2026年3月)
- 「私が見てきた生徒の話」「私の考え」は、私個人の経験と見聞きによるものです
