勉強時間は増えたのに、成績が下がった。

学習のつまずき

勉強時間は増えたのに、
成績が下がった。

机に向かう時間は倍になりました。計画表も作りました。それなのに、点数だけが下がっていく。このとき、良かれと思ってしたことが、そのまま逆に働いていることがあります。

この記事が対象にしているお子さん
  • 平日も休日も、決めた時間はきちんと机に向かっている
  • 計画表を作り、教科ごとに時間の配分も決めている
  • ノートはきれいに取れているし、授業中に眠ってもいない
  • 宿題も課題も出している。学校も休まない
  • それなのに、点が上がらない。あるいは下がっている

机に向かってはいるものの、実際にはスマートフォンを触っている時間が長い、というお子さんはこの記事の対象ではありません。その場合は、手当ての順番が変わります。

ご相談の中で、いちばん多い型かもしれません。そして真面目なお子さんほど、この状態になります。

平日は5時間ほど机に向かっている。受験が近いからと、休日は10時間近く。時間は確かに増えました。睡眠も削っていません。部活のあとに時間を確保できるよう、ご家庭でも協力されている。

それでも、テストの結果が返ってくると点が下がっている。本人がいちばん分からなくなっています。

よく見る形
机に向かった時間

平日5時間・休日10時間。
倍近くに増えている

テストの点数

上がらないどころか、
下がっていることもある

このとき、多くの場合は「まだ足りない」と考えます。そこでさらに足す。参考書を1冊追加する、要点をまとめた資料を用意してあげる、勉強時間をもう1時間伸ばす。そして、また下がります。

先に結論から
足りないから下がったのではありません

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

足りないから下がっているのではなく、足したから下がっている。そういうことが起こります。

順番が逆になっているように聞こえると思います。ですが、ある条件が揃っているお子さんの場合、与えれば与えるほど結果が悪くなるということが実際に起きます。

その条件とは、大事なものと、そうでないものを切り分けられていない状態です。

切り分けができていない状態で量を足すと、切り分けなければならない対象が増えるだけになります。手は増えた分だけ動きます。時間も増えます。けれども、進んでいる方向は変わりません。

どこから始まっているか
起点は、学校の授業の聞き方にあります

意外に思われるかもしれませんが、いちばん最初のつまずきは家庭学習ではなく、学校の授業を受けているときに起きています。

真面目なお子さんは、板書をきちんと写します。ノートは整っていて、色分けもされている。ここまでは、誰が見ても良い状態です。

問題は、何が大事で何がそうでないかの区別がないまま写していることです。全部を同じ濃さで写す。手はずっと動いています。ですが、そのあいだ頭は「写す」ことに使われていて、内容の理解には向いていません。

そこから先は、こういう順序で進みます。

起きていること
  1. STEP 1授業中、板書を均等に写すことに集中する。手は動いているが、内容は入っていない
  2. STEP 2ノートには、単語やキーワードだけが残る。それらがなぜ大事なのかは残らない
  3. STEP 3ワークを解く。空欄に語句を入れる問題は埋まる。記述の問題で手が止まる
  4. STEP 4解答を見て、赤で書き写す。そして、その答えそのものを覚えようとする
  5. STEP 5テストには、似た問題は出るが、同じ問題は出ない。覚えた答えが使えない

本人の側から見ると、どの段階でも手を抜いていません。授業は聞いた。ノートも取った。ワークもやった。間違えたところは赤で直した。やるべきことは、全部やっています。

だからこそ、点が取れなかったときに理由が分かりません。「もっとやらないといけないのかな」となります。そして時間を増やす。ですが、増えるのはSTEP 1からSTEP 4の作業時間だけです。

ここからが本題です
良かれと思ってしたことが、逆に働く

成績が下がったとき、周りの大人は手を打ちます。私も含めて、何かしてあげたいと思うのは自然なことです。

ところが、切り分けができていない状態のお子さんに対しては、その手当てがそのまま逆向きに働くことがあります。

よくある手当て 切り分けができていない場合に起きること
参考書やワークを追加する
見なければならないものが増えます。もともとどれが大事か分からない状態なので、迷う対象が増えるだけになります。手をつけていないものが目に入るたび、焦りも増えます。
要点をまとめた資料を作ってあげる
大事なところを選ぶという作業を、大人が代わりにやったことになります。渡された側は、それを覚える作業に入るだけです。いちばん必要な「自分で選ぶ力」は育ちません。
勉強時間を増やす
増えるのは、均等に写す時間と、答えを覚え直す時間です。やり方が変わらないまま、同じ作業が長くなります。本人の疲労だけが積み上がります。

どれも、それ自体は悪いことではありません。切り分けができているお子さんに渡せば、そのまま力になります。効くかどうかは、渡すものではなく、受け取る側の状態で決まります。

別の分野から見ると

私は指導のほかに、プロジェクトマネジメントの国際資格(PMP)を持っています。仕事の進め方を設計する分野の資格です。

その分野に、スコープクリープという言葉があります。プロジェクトの途中で、やることが少しずつ増えていく現象を指します。追加される一つひとつは、たいてい良い提案です。あれもやったほうがいい、これも入れたほうがいい。誰も悪気がありません。

それでも、全体としては遅れます。優先順位が決まっていない状態で作業が増えると、どれから手をつけるかを判断する負荷そのものが増えていくためです。

勉強で起きていることも、構造はよく似ています。順番が決まっていないところに量を足すと、量が増えた分だけ遅くなります。

気づきにくい理由
「私にはできたのに」と言われることがあります

ここは、少し書きにくいことを書きます。断定できる話ではありませんが、そういうケースがあった、という範囲で受け取っていただければと思います。

ご相談の中で、ご自身が勉強で苦労された経験のない保護者の方ほど、この状態に気づきにくいように感じることがあります。

理由は、能力の差ではないと思っています。勉強が得意だった方は、大事なところを見分ける作業を無意識にやっています。授業を聞きながら、ここは押さえる、ここは流す、という判断が自然に働く。

無意識にできてしまうことは、技術として認識されません。だから、教えようとしても言葉になりません。結果として渡せるのは、「もっとやりなさい」「この問題集がいいよ」といった、量や道具の話になります。

山の登り方は知っている。それでも、エベレストには登れません。

登り方が間違っているわけではありません。ただ、その山を登るために必要なものが、それだけではないというだけです。

そして、塾や家庭教師を検討されるご家庭は、教育に関心が高く、お子さんのために手を尽くされています。熱心であるほど、手当ての量も多くなります。そのぶん、この形にはまったときの進み方も速くなります。

繰り返しますが、これはどなたかの落ち度という話ではありません。見えないものは、見ようとしても見えないというだけです。そして、そこは外から一つひとつ聞いていけば分かる場所でもあります。

実際にあった例
時間だけが増えていった生徒

実際に指導した生徒の例です。ご本人が特定されないよう、学年や科目などは伏せています。

相談を受けたときの状態
勉強時間平日5時間前後。休日は10時間近く。計画表もあり、教科ごとの配分も決めていた
生活睡眠は7時間ほど確保。学校も休まず、部活も続けていた
ノートきれいに取れている。板書は漏れなく写されていた
課題学校の宿題も、こちらから出した課題も、期限どおりに提出
テスト時間を増やしたあとのほうが、点が下がっていた

答案を見せてもらって、はっきりしたことがありました。ワークで散々やったはずの内容が、聞かれ方を変えられると答えられなくなっていたのです。

語句を答える問題は取れています。落としていたのは、理由を書く問題と、条件が少し変わった問題でした。ワークの答えは、正確に赤で書き写されていました。ただ、それはその問題の答えとして覚えられていたということでもありました。

やったこと

家庭学習のやり方から入りませんでした。起点が学校の授業にある以上、そこを変えないと、同じことが毎週繰り返されるためです。

授業の受け方について、伝えたこと
  • 授業の最初と最後を、いちばん集中して聞く。多くの先生は、始まりに今日やることを話し、終わりにまとめを話します。そこに、その日の授業で何が大事だったかが入っています。ここを取り逃すと、あとは全部が同じ重さになります。
  • 板書は、写すものではなく確かめるものとして使う。耳は先生の話に向け、目で板書を追う。書かれていないことのほうが、実はずっと多い。「なぜそうなるか」は、たいてい口で説明されて、黒板には残りません。
  • 黒板が消されたあと、自分の言葉で言えるかを基準にする。ノートを見ずに、その日やったことを説明できるか。同じ言葉でなくて構いません。むしろ、別の言い方に置き換えられたときのほうが、身についています。

最初からできたわけではありません。授業のあとに何を話したか聞いても、最初はほとんど出てきませんでした。そこを、一つずつ潰していきました。

私の授業のほうでも、答えが合っているかは確認しません。なぜそうなるのかを、本人に説明してもらう形にしています。説明できていなければ、そこはまだ終わっていないものとして残します。やり取りの記録はこちらで取っているので、書き留めることに気を取られなくて構わない、とも伝えています。

結果

先に申し上げると、勉強時間は増えていません。むしろ、やることを絞ったぶん短くなりました。

変わったのは、同じ時間の中で何をしているかのほうです。答えを覚える時間が減り、なぜそうなるかを言葉にする時間が増えました。そこから、点数がついてきました。

ご家庭で試す場合
今日の授業について、ひとつだけ聞いてみてください

切り分けができているかどうかは、答案を見なくても、その日のうちに確かめられます。

今夜できること
「今日の授業、最後に先生は何て言ってた?」

ノートを見ずに答えてもらってください。すらすら出てくるなら、聞くべきところは聞けています。

出てこない場合、その日の授業は「板書を写した時間」になっていた可能性があります。責める必要はありません。どこを聞けばいいのかを、まだ教わっていないだけです。

そのうえで、しばらく足すのをやめてみてください。新しい参考書も、まとめた資料も、追加の時間も、いったん止める。切り分けができていない状態で足したものは、負担にしかなりません。

まず、いま持っているものの中で、説明できないまま残っているものがどれだけあるかを見るほうが先です。減らしてから足すほうが、結果的に速くなります。

そして、これは正直に書いておきます。ご家庭でこの確認を毎日続けるのは、簡単ではありません。お子さんも、毎晩聞かれれば身構えます。週に一度でも、一つの単元でも構いません。説明できるかどうかを見る習慣があるだけで、見えるものがかなり変わります。

まとめ
増やす前に、順番を決める

勉強時間は増えたのに成績が下がった。この状態を見たときに、確認したいのは次の3つです。

  1. 1その日の授業で、いちばん大事だったことを言えるか。ノートを見ずに、自分の言葉で
  2. 2ワークで間違えた問題を、答えではなく理由から説明できるか
  3. 3この1か月で足したもの(参考書・資料・時間)が、何に効いているか説明できるか

3つ目は、お子さんではなく大人に向けた確認です。足したものの効果を説明できないなら、それはまだ効いていない可能性があります。

やることを増やすのは、順番が決まってからで間に合います。順番が決まっていない状態での追加は、多くの場合、進みを遅くします。

何が抜けているのかを、一緒に確かめます

時間の使い方を変える前に、いまどこで止まっているのかをはっきりさせるほうが先です。まずは無料相談で、現在の状態を確認しませんか。指導をお受けするかどうかは、そのあとで決めていただいて構いません。

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