自分の授業を、
文字に起こして
読み返してみた
自分が普段どうやって教えているのか、実はあまり分かっていませんでした。だから一度、授業をまるごと文字に起こして、読み返してみたんです。そこには、自分でも意識していなかった”型”がありました。
正直に打ち明けると、私は長いあいだ、自分の授業を「勘」でやっていました。目の前の子を見て、なんとなくここで問いを変えて、なんとなくここで一歩引いて。うまくいくのは分かる。でも「なぜうまくいくのか」を、自分では説明できませんでした。
それが少し、気持ち悪かったんです。感覚でやっていることは、感覚が鈍った日に崩れます。再現できないものは、誰にも渡せません。だから、あることを試しました。自分の授業を、まるごと文字に起こして、他人の授業みたいに読み返してみたんです。
3回分の授業を文字にして読み返して、正直、驚きました。自分が思っていたより、ずっと細かいことを、無意識にやっていたからです。
たとえば、こんな言葉が、あちこちに出てきました。
その場では、何も考えずに口から出ていた言葉たちです。でも読み返すと、一つひとつに、ちゃんと理由がありました。難しい用語を子どもの日常に置き換えたり、わざと要求を下げて緊張をほどいたり、答えを言わずに本人にまとめさせたり。感覚でやっていたことに、あとから理屈がついてきたという感じです。
ここで、はっきり書いておきたいことがあります。これらは、私が発明した魔法ではありません。
読み返して見えてきた一つひとつの型は、調べてみると、どれも教育学や認知科学の世界では、とっくに名前がついている、確立された考え方でした。「認知負荷を減らす」「日常に置き換えて理解させる」「つまずく前に足場を差し伸べる」——すべて、私が思いつく前から、ちゃんとある理論です。
だから私は「独自のすごいメソッド」を売るつもりはありません。むしろ逆で、誰でも知りうる既存の考え方を、たまたま自分は無意識に、しかも一度の授業で同時にいくつも使っていた——ただそれだけのことです。ここを正直に言わないと、話が嘘くさくなると思うので、先に置いておきます。
それを「その子に、その瞬間、どう組み合わせるか」のほうです。
文字起こしから見えてきた型を、私なりに整理すると、大きく4つの柱にまとまりました。個々のこまかい技術は、この4本の柱のどれかにぶら下がっています。
脳に、優しく入れる
覚えることを、あえて減らす。無駄な暗記で頭がパンクしないように、情報の量そのものを設計する。
「なるほど」をつくる
難しい概念を、その子の日常の体験に翻訳する。知らないものを、知っているものに重ねてしまう。
迷子にさせない
つまずいて固まる前に、思考の足場をそっと差し出す。答えは渡さず、たどり着けるところまで一緒に運ぶ。
自信を、事実で育てる
お世辞ではなく、その子が実際にやれたことを根拠に認める。「自分にもできる」を、事実で積み上げる。
この4本の柱の下に、こまかい技術が一つずつぶら下がっています。
面白いのは、この4つがバラバラではなく、順番でつながっていることでした。まず脳に優しく入れて(1)、なるほどと腑に落ちさせて(2)、詰まったら足場を出して(3)、できた事実で自信を育てる(4)。読み返してはじめて、自分がこの流れを毎回たどっていたと気づきました。
授業料をいただいている以上、「この90分で、私が具体的に何をしているのか」は、本当はもっと開いて見せるべきだと思っています。点数が上がった・下がったという結果だけでは、その中で何が起きているかは見えません。見えない部分こそ、いちばんお伝えすべきところだと思うのです。
なので、これから少しずつ、この4つの柱の下にある技術を、一つずつ紹介していきます。抽象的な理論の話ではなく、実際の授業で交わした、生の言葉と一緒に。「メタンガス=オナラ」が、なぜ理にかなっているのか。「ガチ弁しなくていいよ」が、なぜ子どもを勉強から逃がさないのか。一つずつ、開いていきます。
次回から、この一つひとつを、実際の授業のやりとりと一緒に紹介していきます。
「私の90分が、何でできているのか」を、正直にお見せするシリーズです。
Learning PM / 竹内 勇人
診療放射線技師 × PMP × 個別指導歴10年・100名超。「教える人」ではなく、目標まで自走できるよう学びのプロセスを設計・管理します。
